医療療養型とは
医療法において、病院の病床種別は5分類(一般病床・療養病床・精神病床・感染症病床・結核病床)に分類されております。
主に急性期の疾患を扱う一般病床に対し、慢性期の疾患を扱う病床が療養病床であり、急性期医療の後の慢性期医療を担う病床の種別を療養病床と言います。
医療療養型病棟の特徴
医療療養病棟は、急性期医療の治療を終えても、引き続き医療提供の必要度が高く、病院での療養が継続的に必要な患者さまを対象にご利用頂く病棟です。このような慢性期の患者さまに対し、厚生労働省の定めた規定に従い、医療の必要度に応じた医療区分およびADL自立度(日常生活自立度)の視点から考えられたADL区分による包括評価をする事となっております。医療療養病棟は、主に医療区分2~3などの医療必要度の高い患者さまを担当することが期待されている病棟であり、医療区分1の患者さまは、介護医療院や老人保健施設などの介護施設が担当する傾向にあります。状況によっては施設への退院調整目的での入院も可能です。
(厚労省令和4年度診療報酬改定項目の概要より引用)
https://www.mhlw.go.jp/content/12404000/000966248.pdf(29ページ)
お食事が取れない方への治療方針について
当院に入院される方の多くは、経口摂取困難な方です。入院前に医師による面談にて栄養方法について説明させて頂き、患者様本人あるいはご家族様の意向を基に治療方針を決定します。入院後の治療方針変更についてもお気軽にご相談下さい。
栄養管理の方法は
①静脈栄養(末梢静脈栄養または中心静脈栄養)
②経腸栄養(経鼻胃管または胃瘻による)
の二つに大別されます。
大前提として消化管機能(胃腸の働き)が保たれており、かつ消化管が安全に使用できる場合は生理的な投与経路である経腸栄養が第1選択となります。
何らかの理由で経腸栄養が困難な場合に経静脈栄養を選択します。
・中心静脈栄養(TPN)(高カロリー輸液)
中心静脈栄養は高カロリー輸液とも呼ばれ、高濃度の栄養輸液を中心静脈から投与する方法で、エネルギーをはじめ体に必要な栄養素を補給することができます。通常は、糖質、アミノ酸、脂質、電解質(塩分やカルシウム等)、微量元素およびビタミン等の1日必要量を中心静脈から24時間かけて持続的に投与します。経口摂取が困難な状態で経腸栄養が様々な理由で不適切な場合において行う方法で、当院では最も多い栄養管理方法です。
(方法)
当院ではシングルルーメンタイプのカテーテルを使用していますが他院にて造設された埋め込み型のポートでも対応可能です(当院でのポート造設は行っていません)。
留置場所は左右の内頸静脈(首の静脈)または左右の鼡径部(足の付け根)の静脈から選択します。内頸静脈からの留置は清潔を保ちやすい利点がありますが上肢を動かせる患者様では自己抜去のリスクが伴います。また鼡径部からの留置は自己抜去のリスクは低いものの下肢の屈曲や拘縮で留置困難になることがあり、また陰部に近いため汚染されやすいという欠点もあります。自己抜去のリスクが高いと判断した場合には当院の判断にて予防的にミトンの装着をさせて頂く場合があります。
(治療効果に関して)
当栄養方法での予後予測に関しましては当院での過去の中心静脈栄養管理の実績からおおよそ6か月~12か月前後となります。(個人差があるため2年以上の長期予後が得られる場合もあります)その理由としては時間の経過とともに免疫力が低下し感染症に合併しやすくなる点が挙げられます。
・末梢静脈栄養(PPN)
末梢静脈栄養は、腕や足などの細い血管から点滴を投与する方法です。中心静脈栄養に比べて簡便に導入出来る一方で投与できるエネルギー量は200~300kcal程度となるため長期的な栄養維持は困難で栄養状態の悪い患者様や長期間経口摂取ができない患者様には不向きです。また高齢者の血管は脆弱で漏れやすく点滴維持が困難となる場合があります。
経口摂取困難な患者様に対する末梢静脈栄養のみでの予後は平均1~2カ月前後となります。
・経腸栄養
鼻から細いカテーテルを胃まで挿入する経鼻胃管による方法と腹部に胃瘻を造設して栄養剤を注入する方法があります。
短期間の栄養管理には経鼻胃管が適しており4週間以上と長期的投与が予想される場合は胃瘻が最適となります。
経腸栄養は経口摂取と変わりない栄養投与ができ、胃腸の消化吸収能を利用する点で非常に生理的な補給方法といえます。その一方で嘔吐、下痢などの消化器症状を生じる可能性があり、場合によっては誤嚥性肺炎の原因となる場合もあります。
また経鼻胃管の留置は鼻や喉の不快感も強くミトン着用など自己抜去予防対策が必要になるという欠点もあります。